インフラ費用と開発費用、なぜ分けて見るべきか
見積書に「開発費用 ◯◯万円」とだけ書かれていて、サーバーやクラウドの利用料がどこに含まれているのか分からないまま契約してしまった経験はないでしょうか。リリース後しばらくしてから「毎月の請求がこんなにあるとは聞いていない」と経理部長に詰め寄られ、現場責任者が返答に困る、という場面は珍しくありません。
実はこの違和感の多くは、インフラ費用と開発費用という性質の異なる2つのお金を、同じ「開発費」という一つの箱に入れて考えてしまっていることから生まれています。開発費用は一度作れば基本的に終わる「作る費用」であるのに対し、インフラ費用はシステムが動いている限りずっとかかり続ける「動かし続ける費用」です。この2つを分けて見られるようになると、見積もりの読み方も、契約後の予算計画も、だいぶ落ち着いて進められるようになります。この記事では、なぜこの2つを分けて見る必要があるのか、その構造と、発注時に確認しておきたい点を整理します。
「開発費」でひとまとめにされると何が起きるか
見積書の多くは「要件定義」「設計」「実装」「テスト」といった開発工程ごとに費用が積み上がる形で作られています。ここにサーバー代やクラウドの利用料、ドメイン・SSL証明書の費用などが明確な項目として分けて書かれず、「インフラ構築費」の一行だけで済まされていたり、場合によっては開発費の中に薄く混ぜ込まれていたりすることがあります。
契約時点ではこの一行の内訳を気にしなくても、総額としては大きな違和感がないため、そのまま契約に進んでしまいがちです。ところが実際に運用が始まると、クラウドの利用料は使ったぶんだけ毎月請求される仕組みになっていることが多く、アクセス数やデータ量が増えるほど金額も変動します。開発費用は契約時点で確定していたのに、インフラ費用は契約後も変わり続ける性質を持っているという点に、ここでのズレの原因があります。見積もり段階でこの性質の違いを意識できているかどうかで、契約後の心構えがかなり変わってくるところです。
なぜ「作る費用」と「動かす費用」は分けて考える必要があるのか
開発費用は、エンジニアが要件を形にするための作業に対する対価です。基本的には一度支払えば完了し、追加の改修がない限り繰り返し発生するものではありません。これに対してインフラ費用は、サーバーやデータベース、ネットワークといった「システムが動き続けるための土台」を維持するための費用であり、契約が終わっても、システムが稼働している限り毎月発生し続けます。
この性質の違いを踏まえると、インフラ費用は本来、開発会社への支払いというより「電気代や家賃に近い固定的・変動的なランニングコスト」として捉えたほうが実態に合っています。開発費用とインフラ費用を同じ「一回限りの投資」として扱ってしまうと、翌年度以降の予算計画を立てる段階で、想定していなかった継続コストに驚くことになります。ここは、次に見積もりを取るときにそのまま使える視点なので、メモしておくといいところです。
情報処理推進機構(IPA)が公開している「DX白書2023」でも、ITシステムの導入後にかかる運用・保守のコストやリソースを十分に見込めていない企業が一定数存在することが整理されています。導入前の一時的な費用と、導入後も続く費用を分けて捉える意識は、システム開発に限らず設備投資全般で共通して求められる視点だといえます。
インフラ費用が見えにくくなる、もうひとつの理由
インフラ費用が開発費用と混同されやすいもう一つの理由は、誰が実際にインフラの費用を負担する構造になっているかが契約書上はっきりしないケースがあることです。クラウドサービスの利用料は本来、発注者であるクライアント企業が直接クラウド事業者に支払う形にすることもできますが、開発会社が代行して契約し、まとめて請求する形を取ることもあります。
後者の場合、開発会社のマージンがインフラ費用に上乗せされていても、請求書上は「インフラ費用一式」としか書かれず、実際の利用料との差分が見えにくくなります。これ自体が不当だというわけではなく、代行管理には相応の手間がかかるため妥当な範囲の手数料が含まれるのは自然なことです。ただし、発注する側としては「このインフラ費用は実費なのか、代行分を含むのか」を契約の段階で確認しておきたいところです。発注する側が意識しておきたいのはここで、確認していないと、後から金額の根拠を説明できず、社内稟議の場で立ち往生することになりかねません。
また、要件定義の段階でシステムの利用規模や想定アクセス数が曖昧なままだと、インフラ費用の見積もり自体が大まかな概算にとどまり、実際の運用開始後に大きくずれることもあります。この点は要件定義の手戻りが二重コストになる仕組みで扱っている、要件が固まらないまま進むことが費用のブレを生む構造とも重なる部分です。
発注時に確認しておきたいこと
インフラ費用と開発費用を分けて見られるようにするために、見積もり段階で確認しておきたいポイントを整理します。
- インフラ費用が独立した項目になっているか:「開発費用一式」の中に紛れ込んでいないか、明細を確認する
- インフラ費用の支払い先が誰か:クラウド事業者への直接支払いか、開発会社経由の代行請求かを確認する
- 利用規模が変わったときの試算があるか:アクセス数やデータ量が増えた場合、月々の費用がどの程度変動するか目安を聞いておく
- 保守運用費との線引きがあるか:インフラ費用と、不具合対応や問い合わせ対応などの保守運用費が別立てになっているか確認する
これらを契約前に確認しておくと、リリース後に「思っていたより費用がかかる」という事態そのものを避けやすくなりますし、仮に費用が増えた場合も、どの要因によるものかをすぐに切り分けて説明できるようになります。
まとめ
- 開発費用は「作る費用」、インフラ費用は「動かし続ける費用」であり、性質がまったく異なる
- インフラ費用は利用規模に応じて変動し、開発会社経由の代行請求の場合は実費との差が見えにくくなることがある
- 契約前に項目の独立性・支払い先・変動条件・保守費との線引きを確認しておくと、運用開始後の想定外の費用に慌てずに済む
執筆
サイバーコネクト編集部
誇張や決めつけを避け、現場で実際に判断材料になる情報だけをお伝えします。
監修
木村 真之
株式会社サイバーコネクト 代表取締役社長
エンジニアとしてキャリアを開始。自ら事業を立ち上げた経験から、システム開発では事業の目的・顧客の課題・収益構造まで理解することが重要だと考え、技術と事業の橋渡し役となるPMとして活動。2021年11月に同社を設立。
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